参加型学校づくりと地域コミュニティ再編
名古屋市立大学大学院芸術工学研究科 教授 鈴木賢一 1.日本の小中学校の減少 日本では少子高齢化が進み、子どもの数の減少が続いている。小学校(6〜12歳)の児童数は1999年の961万人から2019年には637万人となり、30年間に約34%減少した。小学校数は24,900校から19,700校となり約21%減少した。同様に中学校(12〜15歳)の生徒数は34%、学校数は43%減少した。人口の減少率の大きな地域では、複数の学校を統合することで小規模な学校が増加しないよう方策が取られる場合もある。 2.地域の学校の再編成 現在の学校の多くは、高度経済成長期の1960〜80年ごろに木造から鉄筋コンクリート造に建て替えられた。しかし、不十分なメンテナンスが原因で建物が老朽化しており、改修や建て替えが必要である。建物の更新と人口減少を解決する方法として、小学校と中学校を統合した新しいタイプの学校(小中一貫校)が作られるようになってきた。現在計画中も含め全国で300校程度ある。歴史を重ねて来た小中学校を廃校にしたり、新たな敷地で統合された学校を建設するのには、コミュニティの合意と協力が大前提である。 3.瀬戸市の小中一貫校「にじの丘学園」の計画 愛知県瀬戸市は、陶器(瀬戸物)の産地として有名な人口13万人の歴史ある町である。市内の小学校20校と中学校8校を再編する計画を立てたのは2003年。17年後の2020年2月に、瀬戸の中心街で歴史を重ねてきた5つの小学校と2つの中学校を統合し、施設一体型小中一貫校「にじの丘学園」を新しく開校した。筆者は、学校建築の専門家として、2016年から建築計画のアドバイスをするとともに、地域住民の新しい学校への期待や要望を計画に反映させるためのワークショップを実施してきた。地域住民にとっては、学区が変わりコミュニティが継続できるのか、経験したことのない小中一貫校とはなんであるのか、期待よりも不安が大きかった。 4.「未来の子どもたちの学校」に向けた意見聴取、合意形成 瀬戸市は、「にじの丘学園」を具体化するについて、5つの小学校区のPTA と地域に対して新しい計画を説明し、意見交換を実施した。地域は自治会、保護者、学校、公民館関係者などによる検討組織を設置した。新しい学校環境や通学方法、学校跡地の活用についても議論を重ねた。課題を整理し、解決を示すロードマップを作成し関係者で共有した。 基本構想作成に向けて「子どもたちの未来を考えよう」というテーマを掲げ、夢、子ども、瀬戸、地域という視点から学校への思いを話し合った。学習支援、生活活動支援、環境整備、交流活動の4つの分野の支援に対するアイデアが次々出された。地域の新たな人材の発掘、活用と地域と学校をつなぐマネジメントの重要性も指摘された。瀬戸らしい個性的な学校づくりについて話し合われるにつれ、地域住民は徐々に新しい学校への支援を表明し、コミュニティの拠点としての期待が膨らんだ。 5.施設の特徴とコミュニティ 新しい学校のイメージを繰り返し議論し、施設整備の基本的考え方をまとめた。1)敷地周辺の自然環境に調和した学校、2)小中学校が一体的運営を可能とする施設、3)高機能で多様な学習環境の整備、4)子ども・教職員・障害者など多様な利用者に優しい環境、5)地域と学校の協働関係を円滑に保つ施設、6) 統合する7校の歴史伝統の継承、7)安心安全で長い間活用できる建築、の7項目である。基本構想には児童生徒、学校、地域、家庭、教員などの多様な主体が交流し、地域の学びの場として活用されるコミュニティスクールとして、地域の将来が託された。 開放的な吹き抜け空間にメディアセンターのある新しい学校は、新型コロナ感染による社会混乱により2020年4月にスタートを切ることができなかった。しかしこのことはかえって地域住民の強い絆を作り出した。地区の個性を尊重しつつ、新しい学校を支えようとする住民同士の動きはすでに始まっている。住民と行政、大学の協力なくてしは、このプロセスは語ることができない。
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